マンション売却には「不動産仲介」「不動産買取」「任意売却」などの選択肢があり、不動産を現金化する際はご自身の状況に合った方法を選ぶことが大切です。とはいえ、マンションを売却したいときに、どのような方法を選べば良いかわからない方も多いことでしょう。
ここでは、代表的なマンション売却の方法や流れ、発生する費用・税金や売却時の注意点についてご紹介します。売却に代わる資金調達の手段として「リースバック」や「リバースモーゲージ」「買取保証」についても取り上げますので、幅広い選択肢を比較検討してみましょう。
INDEX
マンション売却の主な目的
マンション売却は、どのような目的で検討する方が多いのでしょうか。まずは、よくあるマンション売却の目的や利用シーンなどをご紹介します。ご自身の状況と似ているケースがあればぜひ参考にしてみてください。

住宅の住み替え
ライフスタイルの変化が理由で住宅の住み替えを検討し、お住まいのマンションを売却する方が多くいらっしゃいます。たとえば、子どもが生まれて家族が増えたため広い家に住み替えたり、通勤の負担を減らすため勤務先に近いエリアに引っ越したりするのは、その一例です。ほかにも、ご両親の介護や、高齢期に適した安全な住まいで暮らすために、マンションを売却するケースも少なくありません。
また、住宅ローン控除の適用期間を考慮して、居住を始めてから10年以降のタイミングで住み替えを検討する方もいます。建物の維持管理に使われる修繕積立金が増額される予定であれば、増額前に住み替えをしたほうが出費を抑えやすくなるでしょう。このように、住み替えに適したタイミングに差し掛かったとき、マンション売却に踏み切るというのもひとつの方法です。
資金調達
事情があってまとまったお金が必要なとき、資金調達の手段のひとつとしてマンション売却を選択する方もいます。特に、年金収入のみで生活を支えるのが難しいシニア世代は、ゆとりある暮らしを続けるために十分な資金を確保しなければなりません。所有している不動産を資金源として活用する選択肢がありますが、高齢者は賃貸住宅への入居が難しいのが注意しておきたいポイントです。
自営業者や経営者が、マンション売却で調達した資金を事業に投資する方法もあります。事業資金の調達方法には、国や自治体が用意する補助金・助成金、金融機関からの借り入れなどが挙げられますが、いずれも条件に当てはまらなければ利用できません。一方、マンション売却ならまとまった資金を調達しやすいでしょう。ただし、自宅の売却後は退去と引っ越しの負担がかかるため、その後の生活を考慮する必要があります。
住宅ローンの返済
住宅ローンの返済が厳しいときは、まず家計の見直しや住宅ローンの借り換えなどの対策がとられます。しかし、これらで対処できない状況にあるときは、マンションを売却する選択肢も視野に入れる必要があるでしょう。マンションの売却価格で住宅ローンの残債を完済できれば、その後は返済を滞納する心配がなくなります。家計が破綻する前に、できるだけ早い段階で検討することが大切です。
一方で、マンションの売却価格よりも住宅ローンの残債が多い状態は、「オーバーローン」と呼ばれます。たとえオーバーローンであっても、ほかに残債を完済するための資金を用意できれば、通常通りマンションの売却が可能です。それに対して、オーバーローンでかつ通常の売却ができない場合には、任意売却を検討することがあります。残債や資金の状況に応じて、適切な方法をお選びください。
代表的なマンションの売却方法

マンションを売却する方法には、主に「不動産仲介」と「不動産買取」という選択肢があります。通常の売却ができない物件は「任意売却」で対応可能です。ここでは、それぞれの特徴をご紹介していきます。
不動産仲介
不動産仲介の特徴
不動産仲介とは、マンション売却のために不動産会社と媒介契約を結び、販売活動のサポートを受ける方法です。買主は主に個人の購入希望者であり、取引が成立した場合には不動産会社へ仲介手数料を支払います。不動産仲介を利用すると、不動産情報サイトやチラシへの広告掲載のほか、交渉や契約手続きに至るまで幅広い支援を受けられます。媒介契約には3つの種類があり、それぞれサポートの内容が異なるため、ご自身の状況に応じて適切な契約方法を選ぶことが大切です。
媒介契約の種類
不動産会社と締結する媒介契約には、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」という3種類があります。このうち、専属専任媒介契約と専任媒介契約では、契約する不動産会社を1社に絞り込む必要があります。さらに専属専任媒介契約では、売主が自分で買主を見つけて売却することができません。一方で、一般媒介契約は不動産会社によるREINS(レインズ)への登録が任意となっており、強制力がないのが特徴です。このように、売主の自由度や売却活動で受けられるサポートの度合いを比較しながら、最も希望に合う契約方法を選びましょう。
不動産仲介のメリット
不動産仲介では、不動産買取と比べて高額でマンションの売却が期待できます。不動産をより高額で売却したいときに適した方法です。また、不動産会社のサポートを受けられるため、売却活動をスムーズに進めやすいというメリットもあります。売り出し価格の決め方や、売れやすい広告方法など、プロの視点からアドバイスを受けられるため安心です。買主との交渉に協力してもらえば、トラブルを防ぎやすくなります。
不動産仲介のデメリット
不動産仲介は、マンション売却のスケジュールの見通しが立ちにくい傾向にあります。一般的には、1~3カ月で買主が見つかるといわれますが、期間はあくまで目安です。場合によっては売却に難航するケースもあり、現金化までに時間がかかる可能性があります。また、売却活動で内覧に対応したり、瑕疵担保責任を負ったりと、売主に少なからず負担がかかるのもデメリットといえるでしょう。
不動産買取
不動産買取の特徴
不動産買取とは、マンションを不動産会社に買い取ってもらう方法です。不動産会社が買主であるため、売却価格の交渉が成立すれば、物件の速やかな現金化が期待できます。個人の買主と取引をする必要がないことから、内覧や広告掲載をはじめとした売却活動が不要で、かつ仲介手数料が発生しません。売却前のリフォームやリノベーションは不動産会社が行うため、売主は費用を負担しなくて済みます。ただし、その分市場相場よりも売却価格が低くなる傾向にある点を考慮しましょう。
不動産買取のメリット
不動産買取では、マンションを短期間で確実に売却しやすいというメリットがあります。不動産会社との交渉が問題なく成立すれば、早くて1週間程度で売却を完了させられます。さらには、買主が不動産会社であることから、売主のリスクが少ないのも魅力です。売却活動が不要であるためプライバシーを守りやすく、瑕疵担保責任を負う必要もありません。マンションを安心して売却しやすいのも大きなメリットです。
不動産買取のデメリット
不動産買取でマンションを売却すると、売却価格は相場よりも3割ほど安い金額がつけられます。できるだけ高額での売却を希望する場合は、不動産仲介で買主を探したほうが良いでしょう。また、短期間で高額な売却が期待できるマンションは、不動産買取を選択すると不利な取引になる可能性があります。新築や築年数の浅い物件、立地条件の良い物件などは、より有利な売却方法をお選びください。
任意売却
任意売却の特徴
任意売却とは、住宅ローンの返済が困難なとき、債権者の合意を得てマンションを売却する方法です。市場相場に近い金額での売却が期待でき、売却代金の一部は住宅ローンの返済に充てられます。不動産会社に任意売却の依頼をすると、金融機関との交渉が行われ、成立すれば不動産の売却価格や返済計画などの条件に許可をもらえます。一方で、任意売却を行わずに住宅ローンを滞納すると、最終的に自宅が競売にかけられ、強制退去する流れになるため注意が必要です。
任意売却のメリット
任意売却は、競売と比べて債務者の負担が少ないのがメリットです。マンションは高額での売却が期待できるため、返済時に残債をより多く減らしやすくなります。また、一般的な仲介売却と近い形で売却活動を行うことで、経済的な事情を周囲に知られにくいのもメリットでしょう。金融機関との交渉が無事に成立すれば、退去にともなう引っ越しや残債の返済を無理のない計画のもとで行えます。
任意売却のデメリット
任意売却を行うためには債権者の合意が必須です。そのため、条件や不動産会社の実力によっては金融機関から任意売却を認めてもらえず、交渉を成立させられないおそれがあります。競売が迫ると交渉の時間を十分に確保するのが難しくなるため、できるだけ余裕をもって任意売却の判断をすることが大切です。また、任意売却の実績が豊富な信頼できる不動産会社を探す必要があるでしょう。
特徴 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
不動産仲介 | 買主は主に個人の購入希望者 取引成立時は不動産会社へ仲介手数料を支払う 不動産情報サイトやチラシへの広告掲載等、幅広い支援を受けられる | 買取と比べて高い金額の売却が期待できる スムーズに進めやすい | 売却スケジュールの見通しが立ちにくい 現金化までに時間がかかる可能性がある |
不動産買取 | 不動産会社に買い取ってもらう 仲介手数料は発生しない | 短期間で確実に売却しやすい 安心して売却しやすい | 売却価格が安くなる |
任意売却 | ローンの返済が困難なときに利用 金融機関との交渉が必要 | 競売に比べて引っ越し期限や残債の返済に余裕が生まれる | 金融機関が認めてくれない場合がある |
マンション売却の流れ
ここからは、実際にマンションを売却する際の流れについて、不動産仲介を例に挙げて解説していきます。多くの人にとって、マンションの売却は初めての経験になるはずです。最初に全体の流れを掴んで、売却に関する理解を深めておきましょう。

価格査定の依頼
最初に行っておきたいのが、価格の査定を受けることです。自分の住んでいる部屋がいったいいくらで売れるのか、その売却価格を算出するのが査定です。そもそも売れる価格が分からなくては、スムーズな売却活動ができません。
査定は、相場に見合った価格で売り出すほかにも、売却後を見据えた資金計画を明らかにするためにも役立ちます。価格が高すぎると売れませんし、安すぎても損をしてしまいます。ローンが途中の場合にはその返済や、住み替えをする場合には次の住居の頭金にも影響してきます。
査定にはマンションの立地や築年数、過去のデータなどから計算できる机上査定と、実際に部屋の中を見て判断する訪問査定があります。まずは気軽に依頼できる机上査定で、複数の不動産会社に見積ってもらうのが一般的です。
マンションの売却価格は、さまざまな要素によって変動します。例えば、マンションのグレードや、管理・メンテナンス状況も査定額に影響するポイントです。たとえ築年数が古い中古マンションでも、グレードやメンテナンス状況によっては相場より高値で売却できる可能性があります。また、同じマンションで売り出されている物件の価格も、査定額の参考となります。マンション内の物件と比較して、大幅に金額が高いと売れにくくなるためご注意ください。
ただし、査定で得られる見積りはあくまで予想される価格であって、実際にその金額で売れるかどうかは売り出してみないと分かりません。
媒介契約を結ぶ
複数の不動産会社から見積りを取ったら、その中から実際に売却の手伝いを依頼する会社を決め、媒介契約を結びます。正式に書面での契約を交わして、初めて売却活動が始まります。
売り出しの開始
不動産会社との契約が済んだら、いよいよ売却活動のスタートです。
不動産会社はまず、販売のための資料を作り、店頭に置いたり近辺にチラシを配ったりします。同時に、自社や不動産のポータルサイトに情報を登録し、多くの人の目につくような手配をします。そして、それらを見た人から問い合わせが入ってきたら「実際に現地を見てみませんか?」という案内をします。これを内覧といい、いかに好印象を持ってもらえるかがカギとなります。
内覧を行う日時は、不動産会社が希望者との間で調整を行いますが、休みの関係上、土日や祝日に集中するのが一般的です。内覧の予定が入った時間帯は、売却側も同席する必要があるので、負担を考えると早期に買い手を見つけることが重要となります。
売買契約を結ぶ
内覧を通じて好印象を取りつけ、購入してくれそうな人が現れたら、実際に契約するかどうかの交渉が始まります。価格に対する同意や支払能力、引き渡しをいつにするかなど、細かく確認しながら売買契約がまとめられていきます。
この契約作業は不動産会社の主導のもと進められますが、値引きの要求などは依頼主が一緒に対応を考えなくてはなりません。契約に際して必要な書類も多いため、それらを揃えるための手配も必要です。
準備が終了したら、売主・買主の同席のもと、売買契約書にお互いが署名・捺印します。一般的には、ここで売却金額の10%程度の手付金を受領したり、仲介手数料を半額支払ったりします。
必要書類や契約に際して知っておくべき知識は以下の通りです。
必要な書類等
実印・3ヶ月以内に交付の印鑑証明書・運転免許証等の本人確認資料・印紙代
瑕疵担保責任
マンションを売却する際、売る側に生じる責任が「瑕疵担保責任」です。これは売却後に何らかの欠陥が発覚した場合、売った側がその欠陥を補償する責任を負うというものです。詳しくは、事前に不動産会社に確認や相談をしておきましょう。
契約解除
何らかの理由で契約破棄になった場合、その原因を作ったほうに責任が生じます。どのような場合にどの程度のペナルティが発生するのか、事前に確認しておきましょう。
物件の引き渡し
引き渡しの際には、取引に関わる関係者が顔を合わせます。売る人と買う人および双方の銀行担当者・不動産会社の担当者・司法書士などです。
引き渡し時に必要となるものは以下になります。
- 複製を含めた全ての鍵の類
- 部屋の権利証もしくは登記識別情報通知書
- 固定資産税・都市計画税納税通知書
- 固定資産税評価証明書
- 公共料金の領収書
- 抵当権等の抹消書類(金融機関が用意)
- 管理費・修繕積立金の確認書等
- 管理規約や使用細則
- 分譲時のパンフレット
買主は残金を入金し、売主はそれを確認してから、部屋の鍵と書類等を渡します。ローンの残りがある場合は、抵当権抹消書類が司法書士に渡されます。司法書士は登記所で所有権移転登記や抵当権抹消登記、そして新しい抵当権設定登記などを行います。
マンション売却時に発生する費用・税金と活用できる特別控除

マンションを売却すると、さまざまな手数料や税金の支払いも発生します。それらを合計すると売却価格の数%を占めますので、あらかじめ確認しておきましょう。
マンション売却時に発生する主な費用・税金
仲介手数料
仲介会社に支払う費用です。売却価格が400万円以上の場合、最大3%+6万円+消費税がかかります。例えば売却価格が3,000万円の場合、3,000万円×3%+6万円+消費税10%(2020年3月現在)=105.6万円が上限額となります。
印紙税
マンション売買時に作成する「不動産売買契約書」に収入印紙を貼り付ける必要があります。
印紙税は決められた税額の収入印紙を文書に貼付することで納税するもので、契約書に記載する金額(譲渡価額)に応じて印紙税額が算出されます。
なお、令和4年3月31日までの間に作成される不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるものは印紙税の軽減措置が講じられ、税率が引き下げられています。
500万円超~1000万円以下:1万円(軽減税率:5千円)
1000万円超~5000万円以下:2万円(軽減税率:1万円)
5000万円超~1億円以下:6万円(軽減税率:3万円)
1億円超~5億円以下:10万円(軽減税率:6万円)
貼付した収入印紙には再利用を避けるため、押印や署名で消印をします。消印をすることで納税したということになりますので忘れないようにしましょう。
金融機関への手数料
住宅ローンを利用していて、手元に十分な自己資金がある方は、売却前にローンを一括返済する選択肢もあります。一括繰上返済には手続きが必要で、金融機関によって定められた手数料が発生します。手数料の金額の目安は1万円~3万円です。
リフォーム・クリーニング費用
マンションは売りたいけれどリフォームをしてからとなると結構な費用がかかります。リフォームは絶対しなくてはならないものではありません。ただしハウスクリーニングはほぼ必要になると思っておくとよいでしょう。
登録免許税
住宅ローンの返済が残っているマンションを売却する際は抵当権を抹消するための手続きが必要で、抵当権抹消登記に登録免許税がかかります。
費用は不動産1件につき1000円。マンションの場合は、土地と建物それぞれに抵当権が設定されているため、合計で2000円の登録免許税がかかります。
なお、不動産売買の際は所有権移転の登記も発生しますが、こちらにかかる費用は買主が負担するのが一般的です。
税額の計算方法は、登録免許税額=(課税標準)×(税率)となります。
「課税標準」は、市区町村役場で管理している固定資産課税台帳の価格がある場合は,その価額で、市区町村役場で証明書を発行しています。
固定資産課税台帳の価格がない場合は,登記所が認定した価額です。不動産を管轄する登記所の登記官にお問い合わせください。
「税率」は土地売買の場合、令和3年3月31日まで1.5%、令和3年4月1日以降2%。
土地以外の不動産売買の場合、2%となります。
登記手続きを司法書士に依頼する際は別途、手数料が必要です。
譲渡所得に対する税金
マンションの売却によって利益(売却益)が出た場合、譲渡所得税、住民税、復興特別所得税の3つの税金が発生します。
土地や建物を売却して得た所得を「譲渡所得」といい、譲渡所得については、他の所得と分離して所得税と住民税が課税されます(分離課税)。 なお、売却により損をした場合、つまり譲渡所得がマイナスの場合には課税されることはありません。
譲渡所得の計算方法:譲渡価格(売却金額)-取得費-譲渡費用
取得費:マンションの購入価格から減価償却費を除き、購入時の諸費用を加えた金額
減価償却するのはマンションの建物部分だけとなります。計算式はこちら。
減価償却費(定額法)=取得費 × 0.9 × 償却率(*1) × 経過年数(*2)
*1:償却率
償却率は構造により異なり、例えば「鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造」であれば「0.015」。
*2:経過年数
1年未満の端数は、6カ月以上は1年、6カ月未満は切り捨て。
計算例:
・10年前に6500万円(建物価格3000万円)のマンションを購入
・マンションは鉄筋コンクリート造
計算式:3000万円×0.9×0.015×10=405万円
その他取得費用としては、購入時に支払った税金や設備費・改良費も含まれます。
譲渡費用:売却するために直接かかった諸費用
例えば、仲介手数料、印紙税、名義書換料などが該当し、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用などは譲渡費用にあたりません。
各種税金の税率はマンションの所有期間によって変わります。
所有期間が、売った年の1月1日現在で5年を超える場合は「長期譲渡所得」に、5年以下の場合は「短期譲渡所得」になります。
なお、相続したマンションの場合は、被相続人がマンションを購入した時から数えます。
- 短期所有(5年以下):所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%
- 長期所有(5年超):所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%
所有期間が10年を超える場合、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」が利用可能。
- 6,000万円までの部分:所得税10%、住民税4%、復興特別所得税0.21%
- 6,000万円を超える部分:所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%
復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興財源に充てるため、2037年(令和19年)12月31日まで、通常の所得税に上乗せして徴収される特別税で、合計税率は「所得税率×2.1%」になります。
マンション売却時に活用できる3000万円の特別控除
3000万円の特別控除とは
マイホームを売ったときの譲渡益について、3000万円まで控除できる制度です。
正式名称は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」。
譲渡所得が3000万円以下だった場合は所得税や住民税、復興特別所得税がかかりません。
3000万円の特別控除の特例を受けるための利用条件としては以下のようなものがあります。
- 自分が住んでいる居住用住宅の売却であること
- 売却の前年、前々年に3000万円の特別控除を利用していないこと
- 売り手と買い手が親子や夫婦など特別な関係でないこと など
3000万円の特別控除を利用するときの注意点
3000万円の特別控除は特定の居住用財産の買い換えの特例や住宅ローン控除との併用はできません。マイホームを売ったときの軽減税率の特例とは併用可能です。また、別荘や仮住まい用の住居の売却には利用できません。
マンション売却の注意点

マンション売却で注意しておきたいポイントを売却前・売却中・売却後の3つのタイミングに分けてご紹介します。初めての売却では不明点や疑問点も少なからずあるでしょう。信頼できる不動産会社を選び、マンション売却を成功させるためにご一読ください。
マンション売却前
マンション売却前に行うべき最も重要なことは、何といっても信頼できる不動産会社選びです。そしてこれを誤って失敗しないために、現状の把握をすることです。
まずは複数社の不動産会社に見積りを依頼し、大まかな相場の価格を知りましょう。そこから大きく外れた金額を見積ってきた会社は、何か特別な理由がない限り、信用度が下がるといえます。特に、際立って高い査定金額を提示してきた場合、仲介業者の営業マンが受注するために根拠なく数字を上げてきている可能性があるので要注意です。
逆に、不動産会社から住まいの現状を聞かれた際は、自分が把握していることを正直に伝えましょう。水回りにトラブルがある・壊れている箇所がある・騒音がするなど、住んでみるまで分からないことを隠しておくと、後々トラブルに発展します。
このように、売却活動を始める前に不動産会社としっかり打ち合わせを行い、いつ・いくらで売り出すのか、想定される経費の金額などを確認しましょう。
マンション売却中
売却期間中に最も大事なことは、見込みのある買い手をたくさん内覧に呼び、早い段階で契約を締結することです。契約が決まらず長期化すると、価格の引き下げを余儀なくされたり、そこからさらに値引き交渉を持ちかけられたり、最悪の場合、不動産会社の熱意が冷めたりしてしまいます。かといって、早期に契約したいからと価格を下げすぎては損をします。売却計画では時間の余裕を持つことも大切です。
また、好条件で契約するために心がけたいのが、内覧者への対応です。購入検討者に良い印象を持ってもらうには、部屋を綺麗に掃除しておくことがかかせません。特に玄関やバルコニーなどのスペースや、流し・トイレ・お風呂などの水回りは印象に大きく関わります。ハウスクリーニングはもちろんのこと、余計な荷物があれば極力見えない所に隠して、部屋をスッキリ見せましょう。収納しきれない場合はトランクルームなどに移したり、先に引っ越しを済ませたりして部屋を空っぽの状態にしておくのもおすすめです。
売却活動が長期化すると、不動産会社から価格の値下げの提案を受けるでしょう。そのときは、果たして不動産会社の営業努力は十分なのか、もっとできることはないのか確認し、もしも不足があれば、値下げよりも広告などの営業努力や、売却方法の作戦変更などを求めましょう。
マンション売却後
無事に買い手が見つかり売買契約の手続きをするステップに入っても、まだ安心はできません。ローンの審査が通らなかったり、引き渡し後に契約に適合しない部分が見つかり「契約不適合責任」を問われたりする可能性があるからです。そうした問題が起きなかったとしても、お金に関する問題は頭に入れておく必要があります。それは売却で得たお金にかかる税金への対策です。
マンションを売却した場合、売った金額が買った金額よりも高ければ売却益が、買った金額よりも低ければ売却損が発生します。売却益が出た場合、自宅用の物件であれば最大3,000万円まで控除できる特別控除制度の利用を検討しましょう。また売却損が出た場合、それ以外の利益と売却損を相殺できる損益通算という措置を利用できます。
いずれの場合も、売却した翌年の春に確定申告をする必要があります。これを忘れてしまうと、税務署からの調査が入り、場合によっては延滞税まで課される可能性も出てきます。
マンション売却についてのよくある質問
マンション売却についてよくある質問と、それに対する回答をご説明します。マンションを売るタイミングやリフォームなどについて、あらかじめ確認しておきましょう。

マンションを売るベストなタイミングはいつですか?
マンションを売るタイミングは、基本的にご自身のライフプランに合わせるのがベストです。売りたい時期に売却するのが望ましいでしょう。一方で、不動産業界での取引量は引っ越しシーズンの2~3月にかけて増える傾向にあります。需要量が多くなることから、これらのピークには購入希望者が見つかりやすいと考えられます。ただし、ピークの時期は同時に供給量も増えるため、ライバルが多くなる点に注意が必要です。
リフォームしてから売却すべきですか?
マンション売却の前にリフォームを行うと、多くの費用が発生します。しかし、リフォームを行ったからといって、売却価格が高くなるとは限りません。リフォームを行わないと明らかに評価がマイナスになると見込まれるケースを除いて、基本的にはリフォームをせずに売っても問題ないでしょう。なかには、買主側が購入後に自分の好みに合わせたリフォームを希望しているケースもあるため、慎重にご検討ください。
設備はそのままにして売却しても大丈夫ですか?
マンションの設備は、買主と合意が取れていれば、設備を残したまま売却しても問題ありません。例えば、エアコン・ウォシュレット・照明器具などの設備は、残しておくケースが珍しくないようです。ただし、場合によっては取り外せる設備を処分してから売却したほうが、スムーズに契約できることもあります。買主が新しい設備への買い替えを予定している場合には、設備の処分をしておくと良いでしょう。
買い替える場合は購入と売却どちらを先に行えば良いでしょうか?
今の住居を売却してから新居を購入することは「売り先行」と呼ばれます。それに対して、新しい住居を購入してから今の家を売却することは「買い先行」と呼ばれます。住宅ローンがまだ残っている場合や、資金に余裕がない場合は、売り先行が望ましいでしょう。この状態で買い先行を選択すると、負担の大きい二重ローンに陥るおそれがあるためです。一方で、すでに住宅ローンを完済していて資金に余裕があるならば、引っ越しの手間が少ない買い先行を選ぶという手もあります。
マンション売却と併せて検討したい選択肢

マンション売却のほかにも、不動産を活用して資金調達をする「リースバック」や「リバースモーゲージ」などの選択肢があります。また、仲介と買取を組み合わせた売却方法である「買取保証」もご検討ください。
リースバック
リースバックの特徴
リースバックとは、マンションを売却すると同時に賃貸住宅として住み続ける方法です。物件の買主となるのは不動産会社や投資家が一般的で、売却が完了したらこの買主と売主が賃貸借契約を結びます。その後は月々の家賃を支払いながら売却したマンションに住み続けるという仕組みです。一般的な不動産仲介や不動産買取では、マンションの売却後に売主が退去することになります。だからこそ、自宅に住み続けながら売却による資金調達ができるのは、リースバックならではの特徴といえるでしょう。
リースバックに向いているケース
リースバックが適しているのは、速やかにまとまった資金が必要なケースです。たとえば、事業資金や老後資金を調達するためにリースバックを活用する方もいます。リースバックは資金用途が自由であるため、事業資金や投資のほか、老後資金や教育費としても利用可能です。さらに、リースバックは任意売却と組み合わせて利用できるため、住宅ローンの返済が難しいときの対策としても検討できます。引き続き同じマンションに住み続け、売却の事実を周囲の方へ内密にしたい場合にも有効です。
リバースモーゲージ
リバースモーゲージの特徴
リバースモーゲージとは、不動産を担保に融資を受ける方法です。シニア層向けの金融商品であり、借り入れたお金は契約者の死亡後に不動産の売却代金から返済されます。生前は利息以外の返済義務がない場合が多く、老後資金の調達先として注目されています。ただし、リバースモーゲージは基本的に一戸建てを対象としており、マンションでも利用できる商品は限られています。また、資金用途は主に老後資金に限られているため、事業資金の調達や投資が目的の方には適していません。
リバースモーゲージに向いているケース
シニア層向けの金融商品であるリバースモーゲージは、老後資金の調達に向いています。特に、持ち家はあるものの年金収入のみで生活を支えるのが難しい方は、リバースモーゲージを活用しやすいでしょう。一般的な金融商品とは異なり、シニア層向けに設計されているため、収入要件がそれほど厳しくないのが特徴です。多くの場合、資金用途が定められていますが、生活資金のほかにも旅行などのレクリエーションや自宅のリフォームなども範囲に含まれ、老後生活の幅広いシーンで役立てられます。
買取保証
買取保証の特徴
買取保証とは、不動産仲介と不動産買取を組み合わせた方法です。決められた期間内に不動産仲介で売却活動を行い、万が一マンションが売れ残ってしまったら、その後は不動産買取に切り替えができます。通常の不動産仲介では、物件が売れ残るリスクがあります。一方で、不動産買取では物件の売却価格が低くなるのが難点です。買取保証を利用すれば、期日までに市場相場で売却できる可能性があり、かつ最終的には不動産会社に買い取ってもらえるため売れ残りのリスクを避けられます。
買取保証に向いているケース
買取保証は、マンションの売却活動をする期間にやや余裕があり、かつ売却完了までの期限があるケースに適しています。たとえば、新居への入居やお子さんの進学をはじめとした、タイミングに合わせた住み替えはその一例です。不動産仲介で買主を見つけられれば、より高額での売却が期待できるでしょう。また、買取保証は物件の引き渡しの予定を調整しやすいため、新居入居前に仮住まいへの引っ越しを避けたい方にも適しています。引っ越しの負担や出費を抑えながら住み替えの準備を進めましょう。
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自分に合ったマンションの売却方法を見つけましょう
今回は、マンションの売却方法に加えて、不動産を現金化する方法をご紹介しました。マンションを売却する方法としては、代表的な「不動産仲介」と「不動産買取」のほかに、「任意売却」があります。また、不動産を活用した資金調達方法として、「リースバック」や「リバースモーゲージ」という選択肢も挙げられます。まとまった資金が必要なときは、売却と賃貸借契約を同時に進めるリースバックも視野に入れてみてはいかがでしょうか。ご自身の状況に合わせて、適切な売却方法を見つけましょう。

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