マンション売却に当たって、事前に物件の価格相場を調べておくと、損をせずに高く売れる可能性が高くなります。相場は不動産会社に査定依頼をすると分かりますが、自分で調べることもできます。
この記事ではマンションの売却価格を確認するための相場の調べ方や、高く売却するために何に注意したらよいのかといったポイント、また売却に当たってかかる費用についてご紹介します。
INDEX
マンションを売却する前に相場を調べよう
マンションの売却を検討する際は、不動産会社に相談する前に自分の部屋がいくらで売れそうなのか相場を調べるようにしてください。相場よりも安い価格で売り出してしまうと、すぐに売れる可能性は高くなりますが、金銭面で損をしてしまいます。逆に実際に調べてみると、予定していた売却価格よりも実際に売れるであろう相場の金額が低いケースもよくあります。落胆してしまうかもしれませんが、売却後の資金計画をより正確にイメージできるのはリスクヘッジの面からも重要です。

また、最終的には不動産会社に査定を依頼し、取引事例などから売却価格の見積もりを算出してもらいますが、そこで出された売却価格に対する判断力が養われる点もメリットです。相場を知らないのをいいことに相場よりも安い金額を提示する不動産会社も存在しますが、自分が調べた想定金額と査定価格が違う場合、理由を確認したり、仲介候補から外したりすることができます。適正価格で売却するためには、相場の調査が必要不可欠です。
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マンションの売却相場の調べ方

実際に自分で相場を調べるには、いくつかの方法があります。今はインターネットが発達しているので、パソコンやスマホで使えるサービスがたくさんあります。
自分が住んでいるマンションの過去の取引価格や現在の売出価格、事例が少ない場合は近隣で似ている物件の事例を探して参考にするとよいでしょう。
次に、主な相場の調べ方をご紹介します。
不動産ポータルサイトを活用する
もっともオーソドックスな方法は、不動産のポータルサイトでの相場調査です。
SUUMO、HOME’S、アットホームなど多くの不動産ポータルが存在します。エリアや駅からの徒歩分数、築年数別、専有面積などで検索できますので、近い条件の物件を参照してみましょう。
これらのサイトでは数多くの物件を扱っていて、購入希望者が常に比較検討しています。売却を希望している人は同程度の物件の中から自分の物件を購入してもらう必要があるので、不当に高い金額を提示することはおすすめできません。
掲載されている物件価格は特殊な事情がない限りは相場の範囲内に収まるため、売出価格の参考にできます。マンション名で検索すれば、自分が住んでいるマンションが見つかる可能性もあるでしょう。
いくつもある不動産ポータルですが、その中でもユニークな機能を有しているのが「HOME4U」です。このサイトの「相場価格検索」を使うと、指定した地域の平均価格が広さや間取りごとに表示されるため、相場を直感的に掴むことができます。
売却までに時間的に余裕がある場合は、一定期間観察して相場動向を見るのも役立つでしょう。
「レインズマーケットインフォメーション」を活用する
レインズマーケットインフォメーションは、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営している情報サービスです。
民間の不動産ポータルとは異なり成約価格が登録されているため、より信頼度が高まります。
レインズには過去に売買された不動産物件の情報が登録されており、間取りや平米当たりの単価、築年数などの条件で絞り込みができます。
ただし、本来は不動産会社しか利用できないサービスであるため、一般の人が見られる情報には制限があります。例えば物件の住所の詳細やマンションの名前、階数などは非公開です。
その代わり、成約時期を指定したり、築年数×平米単価の分布がグラフで見られたりするので、民間の不動産ポータルと併用することで精度の高い判断が可能になります。
「中古マンション価格天気図」を活用する
中古マンション価格天気図は、東京カンテイが毎月公表しているレポートです。全国の不動産取引の状況を、天気図になぞらえて表現するユニークな内容となっています。
取引状況は「晴れ・薄日・曇り・小雨・雨」の5段階で表現され、それぞれ「上昇傾向」「やや上昇傾向」「足踏み傾向」「やや下落傾向」「下落傾向」を表しています。
価格天気図のメリットは、不動産取引相場を視覚的なイメージで理解できる点です。市場の傾向を簡単に把握でき、毎月動向を見ていくことで今後の市場の推移を推し測ることも可能になるでしょう。
地価は「地価公示・都道府県地価調査」を活用する
地価を調べるために活用したいのが、国土交通省の土地総合情報システムに掲載されている地価公示・都道府県地価調査です。毎年、指定された標準地の1月1日の価格が掲載されています。
これが公示地価と呼ばれるものです。住んでいる場所に一番近い標準地を見ることで、当該地域の地価相場が分かります。ピンポイントではありませんが、一定の目安にはなるでしょう。
路線価は「路線価図・評価倍率表」を活用する
路線価は固定資産税や相続税を算定するための基準となるもので、土地が接する道路に対して設定されます。単位は1㎡あたりの金額で、例えば20万円/㎡の道路に接した50㎡の土地であれば、20万円×50㎡=1000万円となります。
なお、一般的に路線価は公示地価の8割程度になっているため、路線価を0.8で割った金額を実際の地価と考えるとよいでしょう。
マンションの売却価格の相場
中古マンションの相場は高騰が続いています。2021年7月~9月の首都圏の中古マンション価格は平均3,897万円でした。

公益財団法人東日本不動産流通機構の中古マンション動向調査によると、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言などの影響で成約件数は減ったものの、2021年7月~9月に成約した首都圏の中古マンションの価格は平均3,897万円で、前年同期比(2020年7月~9月)6.6%、前期(2021年4月~6月)比1.6%上昇しました。2012年10月~12月期以降、平均の成約価格は上昇を続けています。
一方で、成約物件の専有面積は 64.12 ㎡と前年比で 2.4%、前期比1.3%減少。
参考:「季報 Market Watch サマリーレポート 2021年7~9月期」(公益財団法人東日本不動産流通機構)
築年数の経過によるマンションの売却価格の変化

マンションは新築で購入したその時から価格が下がると言われています。築年数ごとの価格の変化を見てみましょう。
中古マンションを購入する際に気になる点の1つが築年数でしょう。築浅物件が人気で、そのため築年数が経過するに連れて売却価格が下がるのが一般的です。公益財団法人東日本不動産流通機構の調査によると、2021年7月~9月に成約した東京都の中古マンションの築年数ごとの成約価格は以下の通りです。
~築5年:7,107万円
~築10年:6,505万円
~築15年:6,053万円
~築20年:5,664万円
~築25年:5,110万円
~築30年:3,459万円
築30年~:2,791万円
築20~30年頃は大規模な改修が必要になるタイミングのため成約価格が大幅に下がっていると考えられます。
築年数が古い物件は安く手に入るため、リノベーションで自分好みに住みやすくすることが可能です。また、新築マンションとして販売していた時からあまり価格が下がっていない中古マンションは、立地が良かったり管理がしっかりしていたりなど価値がある物件といえるでしょう。
参考:「首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況」(公益財団法人東日本不動産流通機構)
マンションの売却相場を調べるときの注意点
売却価格の相場はある程度自分で調べられますが、そこにはいくつかの注意点もあります。また、売却活動に係る費用についても事前に準備しておくと安心です。

ポータルサイトに掲載されている価格に注意
各社のポータルサイトで確認できる価格はあくまで不動産会社が設定した売出価格であって、成約された価格ではありません。
実際の取引では、そこから値下げがされていたり、買主の値引き交渉が行われていたりする可能性もあるので注意が必要です。
中には高い金額で設定した結果、売れ残ってしまった物件もあるでしょう。それを信じて「この金額でも売れるのか」と強気になってしまうのは危険です。
掲載されているデータを鵜呑みにしてはいけない
ポータルサイト、レインズ、地価公示や路線価など、各種の情報源に掲載されているデータ自体は間違ったものではありません。
しかし、信じすぎてしまうのも問題です。そこにあるのは、あくまで情報を集めた時点での価格であり、最新のものではないからです。
特に公示地価については、公表が1年に1回しかされないため、現在の価格と大きく差が出てしまう可能性もあります。
悩んだら不動産会社に相談
相場調査はあくまで自分が騙されないようにし、売却後にどれほどの金額が残るかの目安を知るために行うものです。おおよその相場感を把握したら、その後は不動産会社の査定に任せましょう。複数の不動産会社に見積もりを依頼する時は、一括査定サイトを利用すると手間がかかりません。まずは机上査定を依頼し、その結果から1,2社に訪問査定を依頼するとよいでしょう。
実際の取引においては、部屋の使用感や方角、設備、階数、周辺環境、その時点での景気の影響や、周囲の売り出し中の物件数など、多くの要素が絡み合います。数値だけではないこうしたリアルな情報を踏まえた総合的な評価である不動産査定は、不動産のプロにしかできない側面もあるのです。疑問点は納得いくまで質問しましょう。
マンションの売却にかかる主な費用

マンション売却に関連したてさまざまな費用がかかりますが、主な4つの費用について説明します。
仲介手数料
マンション売却にあたり不動産会社に仲介を依頼し買主を探してもらい、その結果として売買契約が成立すると、不動産会社への仲介手数料の支払いが発生します。仲介手数料は自由に決められますが、宅地建物取引業法によって上限が定められており、売却価格が400万円を超える場合、(売却価格×3%+6万円)+消費税が上限となります。
なお、不動産会社が直接買主となる場合には仲介手数料は発生しません。
印紙税
マンションなど不動産を売買する際に作成する不動産売買契約書。その契約書に記載された売買金額に応じて、契約書に収入印紙を貼付しなければなりません。例えば、取引金額が1000万円超5,000万円以下の場合、1万円の印紙が必要です。契約書に貼付した収入印紙は、印鑑や署名で「消印」を押すことで「納税した」ことになります。消印忘れが判明した場合、印紙税分の金額の過怠税が徴収されることになるので忘れないように注意が必要です。売買契約書は売主・買主用の2通作成しますが、それぞれで印紙税分を負担するのが一般的です。
また売買契約書以外、リフォームの費用が1万円以上であれば「建築工事請負契約」にも収入印紙が必要です。
譲渡所得にかかる税金
自宅マンションを売却したとき売却益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税、住民税、復興特別所得税の3つの税金が発生します。譲渡所得については、他の所得と分離して所得税と住民税が課税されます(分離課税)。 なお、譲渡所得がマイナスの場合、つまり売却により損をした場合には課税されることはありません。
譲渡所得の計算方法:譲渡価格(売却金額)-取得費-譲渡費用
- 取得費:マンションの購入価格から減価償却費を除き、購入時の諸費用を加えた金額
(減価償却するのはマンションの建物部分だけとなります。) - 譲渡費用:仲介手数料や印紙税など
不動産の譲渡所得に関する税率は所有期間によって異なり、不動産を売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下であれば短期譲渡所得、5年超であれば長期譲渡所得の税率が適用されます。また、平成25年から令和19年までは、東日本大震災からの復興に必要な財源を確保するために創設された「復興特別所得税」として、各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。
マイホームの売却にはさまざまな税金の特例があるので、譲渡所得が発生している場合は利用できる「節税」の特例がないか、損失が発生している場合は「還付」の特例がないか確認しましょう。
住宅ローンの繰り上げ返済にかかる費用
住宅ローンを完済する前にマンションを売却して住宅ローンを繰り上げ返済する場合、事務手数料かかります。金融機関によりその金額は異なりますが、数万円の繰り上げ手数料がかかるケースもあります。インターネット経由の手続きについて手数料を安くしている金融機関もありますので、よく確認してみてください。
マンションを相場よりも高値で売却する4つのポイント
マンションの売却を決めたものの、何から始めたら良いか迷う方が多いと思います。こちらでは、相場より高値で売却するための4つのポイントを解説します。

複数の不動産会社で見積もりを取る
ご自宅のマンションがどれくらいで売れそうか、相場観をつかむために査定を依頼してみましょう。不動産会社によって査定額が変わるため、複数の会社に、まずは書類上のデータを基に行う机上査定を依頼するとよいでしょう。住まいについての簡単な入力だけで一括で依頼できるサイトもあります。2~3社程度で見積もりを取るとおおよその相場がわかり、不動産会社から売出価格の提示を受けた際に価格交渉をする根拠ともなります。また、その結果や対応から、仲介を依頼する不動産会社を決める手掛かりにもなります。
マンション売却の実績が豊富な不動産会社に仲介を依頼する
マンション売却の実績が豊富な不動産会社に仲介を依頼することが大切です。不動産会社にはそれぞれ得意なジャンルやエリアがあり、マンションの売買に不慣れな不動産会社に依頼すると時間もかかり高値での売却が難しくなる可能性が高いです。マンション売却の実績が多い不動産会社には高値で売るためのノウハウがあります。会社のHPやパンフレットを見たり、担当者にヒアリングしたりして、売買が得意か仲介の取引件数を確認しましょう。なお、一口にマンションといっても投資用か居住用かなどで違いがありますので、売却したい物件と同種のマンションを扱っていることも重要です。
また、知名度があるからといって大手の会社が良いとも限りません。首都圏の物件は得意かもしれませんが、エリアによっては地元に密着した不動産会社の方がスムーズに運ぶこともあります。
専任(専属専任)媒介契約を結ぶ
仲介を依頼する不動産会社が決まったら媒介契約を結びますが、不動産会社に仲介を依頼する場合、次の3つの契約形態から選択します。
専属専任媒介契約
不動産会社1社と契約して、売却活動の手厚いサポートが提供される方法です。もっとも拘束力が強く、自分で買主を見つけた場合でも直取引は禁止され、契約した不動産会社を通して家を売る必要があります。
専任媒介契約
専属専任媒介契約と同じく1社のみと契約し、売却活動のサポートを受けながら買主を探します。ただし、自分で買主を見つけた場合は、仲介会社を通さずに直接売却できます。
一般媒介契約
もっとも自由度の高い契約方法です。複数の不動産会社と取引可能で、自分で買主を探すこともできます。一方で、売却活動のサポートは専属専任媒介契約や専任媒介契約よりも控えめになります。
一般媒介契約では複数社で販売活動を行っており、他社で成約する可能性もあることから、どうしても販売活動がおざなりになってしまうようです。築年数が浅い、人気があるなど条件が良く売れやすそうな物件の場合は一般媒介で構いません。一方、専属専任・専任媒介契約は1社のみと契約を結ぶため、売買が成立すれば不動産会社は確実に仲介手数料を受け取れるので販売活動にも力が入ります。契約期間の上限は3カ月で、期間中に売買が成立しなければ他社へ依頼される可能性があるため積極的に買い手を探してくれやすくなります。
築年数が浅いうちに売却する
マンションは築年数が浅いほど取得価格に近い金額での売却が見込めます。また、エリアによっては、取得価格以上の売却額がつくことも期待できます。ライフステージの変化に伴い将来的に住み替えを予定している場合、例えば子どもが大きくなったら引っ越そうと思っているのであれば、まだ小さいうちに買い替えるなど、早めのタイミングで売却すると売却価格の下げ幅を抑えることができるでしょう。
マンションの売却には「リースバック」という資産活用法も
マンションを手放そうと思った場合、一般的な不動産売却や不動産会社による買取のほかに、リースバックという方法があります。
リースバックとは、今住んでいるマンションの部屋を市場に公開して売るのではなく、専門の不動産会社に売却する手法です。所有権を移転した後は、その会社からリースする形でそのまま住み続けることが可能です。
通常の不動産売却と違い内覧のための訪問がなく、また売却後に引っ越しをする必要もなく、売却によって多額の現金が比較的短期間で手に入るので、何かしらの理由でまとまったお金が必要となった場合には有力な選択肢になります。
検索してみると買い戻しの価格が売却時よりも高い、家賃を支払う必要があるなどのデメリットや失敗例を目にしますが、近年は一建設の「リースバックプラス」のように最大1年間の家賃を0円にする、買い戻し価格が年々下がっていくなどのプランも出てきています。
じっくりと自分に合った売却方法を探すようにしましょう。
様々な情報がインターネットで入手できる現代では、自分の住んでいるマンションの売却価格の相場を手早く見積もることが可能です。しかし、そこで分かるのはあくまでおおよその相場であり、実際の売出価格については不動産会社に査定を依頼した方が懸命です。
売却活動をスムーズに進めるためには、仲介を依頼する不動産会社の選択が重要になりますので、担当者との相性などを含め慎重に検討しましょう。
また売却にともない費用もかかり、状況によってはリースバックが適している場合もあるので、様々な提案をしてくれる不動産会社をパートナーとすることをおすすめします。
