創業資金や、事業のさらなる成長のため自己資金だけでは足りなくなったときに資金調達が必要です。
資金調達というと、銀行や信用金庫などの金融機関からの借り入れをイメージする人が多いでしょう。地方自治体が用意する起業家向けの補助金や助成金に、自分で申請する方法もあります。ほかにも、個人投資家から出資を受けたり、クラウドファンディングを利用したりするのも一つの手です。
金融機関の融資制度を利用する場合、「審査が厳しい」「保証人が必要」などハードルが高いことも少なくありません。エンジェル投資家や経営者から出資を受けるには、将来性のある魅力的な事業計画が不可欠で事業計画書といった説明資料を作成する準備に時間を要します。それに対して今回は、比較的利用しやすく、現在注目されている資金調達方法である「リースバック」について、メリット・デメリットや利用手順を解説します。
INDEX
資金調達方法は4種類
会社や事業主が利用できる資金調達方法は、大きく分けてファイナンス3種類と補助金・助成金があります。これらの資金調達方法を簡単に説明しましょう。

アセット・ファイナンス
アセット・ファイナンスとは
会社や個人が持っている資産(アセット)を売却して現金を調達する方法です。資産としては不動産といったものではなく、例えば保有している売掛債権なども活用できる、資産から生じるキャッシュフローを基礎として行われる資金調達です。
アセット・ファイナンスのメリット、デメリット
アセット・ファイナンスでは、所有していても収益を生みにくい資産を現金化できるのがメリットです。また、調達した資金は借入金ではないため、一般的な融資とは違って返済する必要がありません。デッド・ファイナンスやエクイティ・ファイナンスと比べて、資金調達を実現しやすいのも大きな特徴です。一方で、アセット・ファイナンスのなかには売却時に手数料が発生するものがあります。このとき、手数料は一般的な利息と異なり、一括での支払いとなる点に留意しましょう。また、ファクタリング会社によっては、高額な手数料を請求される可能性があります。
アセット・ファイナンスの具体例
たとえばファクタリングは、売掛債権を売却することで売掛金に相当する金額の資金調達ができる方法です。ファクタリング会社が売掛金を回収すると、手数料の分だけ利益が出る仕組みとなっています。なお、ファクタリング同様に売掛債権を活用して資金調達する方法としてABL(Asset Based Lending)がありますが、こちらは債権担保融資とも呼ばれており、売掛金を裏付けとしたあくまでも融資です。
リースバックは資産を売却して資金を得るため、アセット・ファイナンスに分類されます。
デッド・ファイナンス
デッド・ファイナンスとは
金融機関からの借り入れや、社債・私募債の発行で資金調達をする方法です。デッド(Debt)は債務を意味します。
デッド・ファイナンスのメリット、デメリット
デッド・ファイナンスのメリットは、エクイティ・ファイナンスのように経営権を債権者に握られずに済むことです。確保した資金は負債として計上されて、資本金が増加しないため税金への影響がありません。節税効果も期待できるでしょう。ただし、デッド・ファイナンスを利用すると、融資金の元金や利息の返済で経営の資金繰りが悪化するおそれがあります。また、税金への影響がない反面、自己資本比率が下がることで経営が不安定に見えやすい点にも注意が必要です。借入額や返済期間によって返済の条件が異なりますが、いずれにせよ返済義務のある資金調達方法であるため、延滞がないよう返済計画に基づいた運用が求められます。
デッド・ファイナンスの具体例
たとえば、日本政策金融公庫の創業融資や、信用保証協会の制度融資などもデッド・ファイナンスに含まれます。地方公共団体などから低金利で借りられる公的融資、最も一般的な銀行融資、無担保で審査は通りやすいものの金利が高いビジネスローンや消費者金融、資本市場で事業資金を募る社債や私募債などがあります。また、売掛債権を売却する手形割引は、アセット・ファイナンスのファクタリングと似た方法ですが、不渡りになった場合に買い戻しの義務があることからデッド・ファイナンスの一種です。利息も加えて返済する必要があるため、上手に利用しないと負債が増えることになります。
エクイティ・ファイナンス
エクイティ・ファイナンスとは
企業が新規に株式を発行して、事業に必要な資金調達をする方法です。IPO(株式公開)した企業は金融機関からの借り入れに加え、エクイティ・ファイナンスという手段が利用できるようになります。
エクイティ・ファイナンスのメリット、デメリット
エクイティ・ファイナンスのメリットは、原則として返済期限がないこと。また自己資本比率が上がり経営の安定性が増して、企業の信用力が高まりやすい点です。場合によっては、より短期間で多額の資金調達を実現できる可能性があります。一方で、株式を多く保有する第三者が関わることで経営の自由度が下がるおそれがあるほか、既存の株主が株式を手放すと株価が下落するリスクがあります。1株あたりの価値が下がると、既存の株主の利益が減る点に留意し、株価への影響を考慮しなければなりません。
エクイティ・ファイナンスの具体例
たとえば、株式を新たに発行して売却する第三者割当増資、新株予約権付社債(CB)、ストックオプションといった方法があります。新たに発行された株式は、自社の役員やベンチャーキャピタル(VC)などが引き受けることが多く、株数や株価によって出資する金額が決まります。
補助金・助成金
補助金・助成金とは
国や地方自治体が中小企業経営者の事業を支援するために設けられた制度で、申請者である事業者や個人に対して「返済不要な資金」を助成する仕組みです。
補助金・助成金のメリット・デメリット
補助金・助成金は、返済義務がないというのが大きな魅力。開業資金や運転資金等として活用でき、国や自治体が定めた応募要件を満たしていれば申し込みが可能です。注意点としては、補助金・助成金を利用するためには審査があり、審査を通過しても手続きに時間を要し、受給までに時間がかかる点です。後払いになるケースも多いです。また、必ずしも全額を賄えるわけではない点も覚えておきましょう。
補助金・助成金の具体例
たとえば創業助成金は、新たな需要や雇用の創出などを促し、日本経済を活性化させることを目的とした、創業時に必要な経費の一部を国や地方公共団体が補助してくれるものです。新分野展開や業態転換、事業・業種転換、事業再編、またはこれらの取り組みを通じた規模拡大といった事業再構築に意欲のある中小企業などを支援する事業再構築補助金、新たな販路開拓などの取り組みを支援する小規模事業者持続化補助金など。
資金調達の失敗例
事業のための資金調達がうまくいかないと事業が失敗する可能性もあります。失敗をしてしまわぬように、よくある失敗の事例を見てみましょう。

不動産を相場よりかなり低い金額で売却してしまった
活用していない遊休資産である不動産を売却したが、結果として相場よりも著しく低い金額で売却してしまったということがあります。更地であれば相場がつかみやすいのですが、マンションなどは竣工時期や立地条件などさまざまな条件で価格が決まるため適正価格が把握しづらいものです。相場観を掴んだり、より高く売却を行ったりするため、不動産の売却時は複数の会社に査定を依頼するのが望ましく、早急に資金調達が必要になったとしても、焦って十分に検討しないまま売却をするのは好ましくありません。
必要な金額以上に融資を受けてしまい返済が負担になっている
資金調達の際、必要金額をアバウトに決めてしまい、借り過ぎによる返済のため資金繰りが悪化することがあり、これでは本末転倒です。資金繰りを悪化させないために流動資産と流動負債の比率をチェックし、融資を受ける際は必要な金額を計算のうえ、過不足ができるだけ生じないように融資額を設定することが大切です。
投資家や投資企業に経営権を握られてしまった
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から資金調達する際には、特定の出資者の持ち株比率が高くならないように特に注意が必要です。経営権を握られ事業の自由度が狭まり、計画通りに進まない恐れもあります。経営権を奪われたくない場合、優先株式(※)を選択するなど、対策を取っておくと良いでしょう。
※優先株式:配当金を優先的に受け取れるなど特別な権利を付ける代わりに、 経営権に制限をかけられる株式
資金調達にも利用できるリースバックとは?

資金調達方法の一つであるリースバックの特徴を解説します。保有資産を売却した後も、リース料を支払いながら利用できるのがポイントです。事業の資金調達にご活用ください。
リースバックとは、機械・設備機器などの保有資産を金融機関やリース会社に売却して資金を得て、その資産をリース契約で利用し続ける方法のことです。
近年では、不動産のリースバックが注目を集めています。自宅や工場を売却して資金化しつつ、売却した家に賃貸で住み続けたり、工場を使い続けたりすることが可能というものです。
現金を得ながらも、リース料を払う必要がある以外は全く変わることなく使い続けられるので、会社運営や生活に与える影響が少ないと言えます。資金調達を行ったことが周囲に知られにくく、比較的利用しやすい方法です。
そんなリースバックでの資金調達をおすすめする事業者としては、具体的に個人事業主・スタートアップ企業・ベンチャー企業・中小企業などが挙げられます。一般的なビジネスローンによる融資と比較したうえで、リースバックを利用する事業者も少なくありません。ただし、リースバックでは億単位の事業資金を調達するのが難しいといえるでしょう。大企業など経営規模が大きい事業者にとっては、必要十分な金額を調達できないおそれがあります。必要な金額に応じて最適な方法で資金調達をご検討ください。
不動産のリースバックで資金調達する流れ

資産価値のあるものとして代表的なのは、不動産でしょう。リースバックでは、個人が所有する自宅のほか、会社が所有しているオフィス、工場、店舗、駐車場、土地そのほかの不動産を売却できます。
一時的に資金が必要になった時にも利用できるリースバックでどのように資金調達をするのか、流れを紹介します。
①不動産売買
不動産の所有者(個人でも会社でも可)が、リースバック業者(不動産の場合は、不動産会社や不動産投資家)に不動産を売却します。
②代金の授受
リースバック業者が不動産を所有している人に不動産の買取代金を支払い、不動産の所有者は売却代金を受け取ります。
③不動産の賃貸契約
リースバック業者と不動産の元所有者の間で賃貸契約を結び、事業者は買い取った不動産を貸し、元所有者は、毎月家賃を支払うことで引き続き利用できます。
以上のように、資金調達の流れは非常にシンプルです。元所有者自身がリースするため、一般的な不動産売却のように、その家に住みたい(またはオフィスや工場を使いたい)買い手を探す必要はありません。不動産投資を目的としたリースバック業者と直接交渉することになるので、取引も比較的スムーズに進みやすいでしょう。
リースバックで資金調達するメリット
金融機関からの融資や一般的な不動産売却ではなく、リースバックによる資金調達には、どのようなメリットがあるでしょうか?

自宅に住み続けられる
一番のメリットは、持ち家を売却することでまとまった資金を調達した後も引っ越す必要がなく、住み慣れた家に引き続き住めることでしょう。そのため、知人だけではなく家族にさえも資金調達したことが分かりにくく、子供の学区が変わることもありません。近所の人にも家を売却したとは知られず、これまでと変わらない日常生活を送れます。
用途が自由
金融機関の融資といった資金調達の場合、用途が決められていることが多いですが、リースバックで得た資金は売却代金なので、用途は制限されません。借金返済、納税、従業員への給与や取引先への支払い、新規事業資金など、さまざまな用途に使えます。 若い事業主が、将来的に買い戻しをすることを前提に、起業や事業の運転のための資金にしたり、投資をしたりすることも可能です。
金融機関の審査がない
もともと持っていた資産を資金にする不動産リースバックは借入ではないので、銀行融資やビジネスローン、不動産担保ローンのような審査はありません。そのため、借金があるなど不利な条件があっても、資金調達に成功しやすいことが魅力です。
維持費が必要なくなる
リースバックの業者に売却して所有権を渡すことになるので、固定資産税を納付する責任はありません。ただし、建物・設備の修繕やメンテナンスにかかる費用は借主(売主)負担となるケースが多いです。
ほかにも、売却先を広く探す必要がないため、現金化までの期間が短いこともメリットとして挙げられます。まとまった資金を急ぎで調達したい方にとっては、審査のないリースバックは魅力的な手段と言えるでしょう。
リースバックで資金調達するデメリット
リースバックはメリットばかりの夢の資金調達方法ではありません。デメリットもしっかり把握した上で、利用するかどうかを決める必要があります。

売却額は低め傾向
リースバック業者からすると、購入したら元所有者に貸す必要があり、ほかの人に売却はできず、元所有者が希望したら買い戻しに応じなければならない、などの制約が多い取引と言えます。そのため一般的な売却より低めの金額がつきやすいのが現状です。
なお、買い戻しに関する規定などは業者によって異なり、希望すれば絶対に買い戻せるというわけではありません。
家賃が相場より高くなりやすい
家賃が高めに設定されやすいことも、デメリットとして挙げられます。すぐに買い戻す予定がない場合、同じ地域の家賃相場より高い家賃を払い続けることになる可能性も考えなければなりません。ただし、リースバックなら引っ越しに関連した費用はかからないので、その点も計算に入れて検討するとよいでしょう。
また賃貸契約に関しても、ずっと契約更新してもらえるとは限らない点も念頭に置いておきましょう。
そのほかにも、そもそもリースバックが利用できない可能性もあります。売却価格がローンの残債より少ない場合は、ローンを返済しきれない恐れがあるので、業者から断られる可能性が高いでしょう。
また、買い戻し価格は売却価格より高くなるのが一般的です。
不動産のリースバックならリースバックプラスがおすすめ
近年、不動産のリースバックを手掛ける業者は増えてきています。数多くある業者の中から、自身の求める条件に合った業者を探し出さなければなりません。
「リースバックプラス」は、家族ごとの人生設計によって2つのプランから選べる、新しいタイプのリースバックです。サポートも充実しています。

リースバックプラスのプランは、しばらく買い戻しを考えていない人のための「標準プラン」と、一時的に資金が必要で、早めに買い戻しを検討している人のための「定期プラン」の2種類があります。
標準プランは住み続けることによって再購入金額が下がります。また、定期プランは1年目の賃料が無料になるほか、退去時キャッシュバック(制度)というお得なプランです。
どちらのプランでも、安心して暮らすのに役立つサービスが利用可能です。3年目以降に一建設の新築戸建てへ転居可能や、売却時に敷金を預けることで毎月の家賃を軽減できるのほか、ご高齢者安否確認コールやセコムのホームセキュリティなどがあり、年配者やその家族の生活をサポートしてくれます。
リースバックは一般の融資やローンのような審査もなく、資金用途に制限がないのがメリットです。しかも、売却後も自宅に住み続けることができ、周囲の人にも家族にも知られにくく、生活環境を変えずに済むので、ストレスも最小限に抑えられます。
資金調達に困ったら、リースバックを利用するのも一つの手段ではないでしょうか。
「資金調達は後々の事業運営も考えた上での検討が必要」
資金調達はスタートでありゴールではありません。事業経験や金融知識不足から騙されないよう注意が必要です。専門家や起業している先達・仲間に相談するなどして、資金調達後に事業の継続が難しくなる、経営権を奪われるなどのトラブルが起きないよう、慎重に準備しましょう。
まだ実績がなく信用度が低い創業期の資金調達は実質、政府系金融機関の創業融資制度に頼らざるを得ない状況ですが、不動産をただ売却するだけではなく活用できる資金調達方法であるリースバックも選択肢の一つとして検討してはいかがでしょうか。
