老後に夫婦でゆとりのある暮らしを送るには、どれくらいの資金が必要なのでしょうか、退職金だけで足りるのでしょうか。子どもの独立や定年退職などのイベントを経て、ライフステージが進んでからも、人生は長きにわたり続きます。老後資金は十分に用意しておきたいものです。
ここでは、夫婦に必要な老後資金や生活費の内訳をご紹介します。また、老後資金を確保する方法についてもお伝えするため、ぜひ将来へ向けてお役立てください。
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老後資金は夫婦でどれくらい必要?
老後生活の資金は、平均的に夫婦でいくらあればよいのでしょうか。ここでは、高齢夫婦の1カ月の収支の目安や、25年間の収支シミュレーションをご紹介します。

高齢夫婦の1カ月の収支
総務省の家計調査年報で、高齢無職世帯の家計収支データ(月平均)が発表されています。高齢無職世帯とは、世帯主が60歳以上の無職世帯のことです。高齢無職世帯の年代ごとの家計収支データは以下の通りです。
月平均の収支
実収入 | 非消費支出 | 消費支出 | 収支 | |
---|---|---|---|---|
60~64歳 | 188,643円 | 32,900円 | 272,927円 | 毎月117,184円の赤字 |
65~69歳 | 259,448円 | 36,760円 | 271,374円 | 毎月48,686円の赤字 |
70~74歳 | 248,056円 | 32,745円 | 256,315円 | 毎月41,004円の赤字 |
75歳以上 | 238,415円 | 30,021円 | 222,574円 | 毎月14,180円の赤字 |
データによれば、すべての年代で毎月の収支に赤字が発生していることが分かります。厚生年金や国民年金といった公的な年金収入のみで家計を支えるのは難しいといえるでしょう。老後生活が長引けば、こうした月々の赤字が長きにわたり積み重なると予想されます。
参考元:家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)Ⅱ 総世帯及び単身世帯の家計収支
25年間(60~85歳)の収支シミュレーション
老後生活の長さは人によって異なりますが、国内では平均寿命が延び、長寿化する傾向にあります。そこで、ここでは上記のデータをもとに、60歳~85歳の25年間を想定した収支シミュレーションをご紹介します。25年間の実収入が約7,037万円、非消費支出が約974万円、消費支出が約7,474万円とすると、約1,411万円の赤字です。この不足分は、預貯金を切り崩しながら補うことになります。なお、年代ごとの年間の収支は以下の通りです。
年代別の収支
実収入 | 非消費支出 | 消費支出 | 収支 | |
---|---|---|---|---|
60~64歳 | 約1,131万円 | 約197万円 | 約1,637万円 | 5年間で約703万円の赤字 |
65~69歳 | 約1,556万円 | 約220万円 | 約1,628万円 | 5年間で約292万円の赤字 |
70~74歳 | 約1,488万円 | 約196万円 | 約1,537万円 | 5年間で約246万円の赤字 |
75歳以上 | 約2,860万円 | 約360万円 | 約2,670万円 | 10年間で170万円の赤字 |
老後生活の長さは、人によって数十年もの違いが出る可能性があります。だからこそ、夫婦でゆとりのある老後を迎えるためには、不足額を十分に補えるだけの資金があると安心です。自分たちの老後の暮らしに必要な費用について理解し、早めに備えておきましょう。
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夫婦で必要になる老後の生活費の内訳

老後生活費とは、具体的にどのようなお金がかかるのでしょうか。ここでは、支出の内訳と費用をご紹介します。夫婦でのゆとりのある老後へ向けて、準備を整えましょう。
総務省が発表した2019年の家計調査年報によれば、高齢夫婦無職世帯の消費支出は月平均239,947円、非消費支出は月平均30,982円でした。高齢夫婦無職世帯とは、夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみで暮らす無職世帯を指します。以下は、消費支出の内訳です。
項目 | 月額平均額 | 構成比 |
---|---|---|
食費 | 66,458円 | 27.7% |
住居費 | 13,625円 | 5.7% |
水道光熱費 | 19,983円 | 8.3% |
家具・家事用品費 | 10,100円 | 4.2% |
衣服費 | 6,065円 | 2.5% |
保険医療費 | 15,759円 | 6.6% |
交通・通信費 | 28,328円 | 11.8% |
教育費 | 20円 | 0.0% |
教養娯楽費 | 24,804円 | 10.3% |
その他 | 54,806円 | 22.8% |
諸雑費 | 20,845円 | 8.7% |
交際費 | 25,749円 | 10.7% |
仕送り金 | 1,134円 | 0.5% |
支出全体に占める割合が特に高いのは、「食費」「通信・交通費」「交際費」でした。なお、住宅費は平均額が低い傾向にありますが、実際には賃貸か持ち家かによって大きく変動します。調査対象には家を所有し住宅ローンの返済が終了している世帯が多いため、平均値としては低い数字が出ていると推定されます。必要な老後生活費の内訳を確認し、受給する年金額や貯蓄額と併せて計算してみましょう。
参考元:家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)Ⅱ 総世帯及び単身世帯の家計収支
夫婦で暮らすための老後資金を確保する方法

夫婦の老後資金の準備方法として、早いうちから資産運用を行うことをおすすめします。そのためにはどういった方法があるのかご紹介しますので、ぜひご検討ください。
個人年金を利用する
老後資金を確保するには、公的年金に加えて私的年金である「個人年金保険」を利用する方法があります。個人年金とは、個人が任意で加入する保険制度です。個人年金を利用して収支を増やすと、老後の赤字を減らすことにつながります。公的年金の受給は65歳から始まりますが、個人年金はその間のつなぎとしても利用可能です。
個人年金保険の商品としては、確定・有期・終身の3種類があり各々のライフプランに合わせて選択します。また要件を満たすと所得控除など税金の優遇措置を受けることも可能です。
積立定期預金を利用する
積立定期預金は、定期的に少額ずつ預金していく資産形成の方法です。一定額を無理なく積み立てておくと、老後の生活資金として利用できるようになります。通常の預金と比べて金利が高く設定されている傾向にあるのもメリットといえるでしょう。積み立てる際は、毎月の収入から自動的に振り替えられるようにしておくと便利です。
支出を見直す
毎月の収支を見直し節約できる部分を見つけて、可能な限り生活費を下げる工夫をしましょう。無駄をできるだけ省けると、その分だけ貯金を増やすことにつながります。定期的に一定額がかかる固定費を見直すのも効果的です。例えば、同じような内容の生命保険を整理・プラン変更して保険料の支払いを軽くする、電力・ガスは自由化によって契約する会社が選べるので安い会社に変えて月額費用を軽くする、などです。住んでいるのが賃貸であれば、住居費を抑えるために思い切って引っ越しをすることも検討し、毎月の家賃減額によりいくら貯蓄に回せるか試算してみるのもよいでしょう。
ただし、生活費を切り詰めすぎて生活の質を落としたり、節約の負担が大きくなりすぎたりしないよう注意が必要です。あくまで自分たちにできる取り組みを心がけましょう。
老後に資金不足に陥りそうなときの対策
予期せぬ出来事が起こったり介護費用が想定以上にかかったりなど、老後の生活資金が十分に準備できそうにないときは、どのような対処方法があるのかをご紹介します。

定年後も働いて収入を得る
定年後も、元気なうちは働き続けることで不足分をカバーするのも良いでしょう。定年後の働き方としては「再雇用」と「再就職」があります。「再雇用」は同じ企業で働き続けることで、本人が希望すれば企業が定年後も引き続いて雇用する「継続雇用制度」を利用します。「継続雇用制度」は人生100年時代に向け働き方改革の一環で定められた制度です。
「再就職」はそれまで勤めていた企業を退職し、新たに自分で仕事を探します。いずれも、雇用形態が変わり賃金が下がることが多いものの、働き続けることが生きがいにもなり健康の維持・増進に役立ち医療費の削減につながる、新たな人脈ができる、時間の余裕が生まれ趣味に時間がさける、といった効用も考えられます。
今後の生活でどれくらいの資金が必要か、不足しているのかといった必要額から働き方を考えていきましょう。パート、契約社員、派遣社員など選択肢は多数あります。
生活保護を受ける
想定外のことが起こるなどして、準備資金が足りなくなることがあります。そういったときは生活保護を受けることも検討しましょう。社会保障給付を受けても必要な生活費に満たない場合などは、年金を受け取っていても生活保護を受給することは可能です。受給するには、扶養してくれる人や活用できる資産がないことも条件ですが、居住用や事業用不動産の保有は認められています。持ち家は居住のために必要な資産として保有を認められることが多いです。
持ち家を売却する
持ち家がある方は、老後資金を調達する目的で売却して、現金化するのもひとつの方法です。生前に不動産を売却しておくと、遺産を分割しやすくなるため、相続トラブルの回避にもつながります。夫婦の老後へ向けて、引っ越しを検討する方もいらっしゃいます。一方で、引っ越しをせずに現在の家に住み続けたい方には、リースバックがおすすめです。
リースバックとは、自宅を売却しつつ、家賃を支払って同じ家に住み続けられるサービスを指します。不動産の売却代金を受け取り、まとまった金額の資金調達ができ、かつ引っ越しをしていただく必要はございません。売却の事実は見た目には分からず、その後も引き続き同じように暮らしていただけるのが特徴です。
一建設では、老後の資金調達にもご利用いただける「リースバックプラス」のサービスを提供しています。ライフスタイルに合わせて「標準プラン」と「定期プラン」をご用意。ご自身の目的にマッチする最適なプランをお選びいただけるのが魅力です。敷金・礼金・仲介手数料・更新料などは不要で、費用の面でも安心して住み続けていただけます。
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夫婦の老後資金で不安にならないために
夫婦世帯に必要な老後資金や生活費の内訳をご紹介しました。総務省の家計調査年報のデータをもとに算出すると、老後は毎月の収支で赤字が発生する可能性があります。毎月の赤字は、積み重なると大きな金額となり、60~85歳の25年間では約1,411万円の赤字となる見込みです。
「人生100年時代」「老後2000万円問題」など騒がれ定年後の働き方、老後の生活資金について考えると不安になるという方も多いと思います。まずは、夫婦2人でどのように過ごすかをシミュレーションし本当に必要な額を知ることから始めましょう。公的年金のみで家計を支えるのは難しい状況にあるので、FPら専門家に相談するなど早めに対策を検討し、資産形成に取り組みましょう。早いうちから備えることで余裕が生まれ安心することができます。持ち家がある方は、リースバックを利用して資金調達を行う選択肢もあります。夫婦の老後資金を確保して、将来への不安を取り除きましょう。
