不動産の購入は「一生に一回の大きな買い物」と言われてきましたが、果たしてそうでしょうか。最近は子どもの独立などライフステージの変化とともに買い替える方も増えてきているようです。
とはいえ「自宅マンションの買い替え」は何度も経験することではないので、何から始めたらいいのか分からないことも多くあります。ここではマンションを買い替えるときの方法や注意点を見ていきましょう。
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マンションを買い替えるタイミング

マンションの買い換えは、必要になったときや買い替えようと思ったときが買い替えるタイミングです。マンションは必ず買い換えなければならないものではなく、また時期などで価格が大きく左右されるものでもないためです。
例えば子供が生まれたときや、親と同居することになったとき、あるいは勤務先や通学先が変わったときなどは、マンションを買い替えるよい機会といえます。
もちろん、そうした必然的な理由がなくとも、例えば市況が好調でマンション価格が購入時より大幅に上がっているようなら、高値で売却して新居に移り住むという選択肢があってもよいでしょう。
国土交通省の「令和元年度 住宅市場動向調査報告書」によると、マンションを買い替えた人(二次取得者)の平均年齢は、分譲マンション57.8歳、中古マンション58.2歳という結果でした。
ボリュームゾーンはいずれも60歳以上で内訳は、分譲マンション:48.2%、中古マンション:46.1%。
新しくマンションを購入した人(一次取得者)の平均年齢は、分譲マンション39.4歳、中古マンション44.8歳で、いずれも分譲マンション(新築マンション)購入者の方が若いという結果でした。
次に買い替えのタイミングですが、マンションを購入しておおよそ10年~20年程度で買い替えを行っていると推察されます。
子どもの独立などライフスタイルの変化を機に買い替えを考える方が多いようです。また、住居の築年数により売却価格に差が出ることも要因の一つかもしれません。
マンションを買い替えるときの流れ
実際に買い替えることになった場合、手順としては「今の住まいを売り払う」のが先か、「次の住まいを購入する」のが先かの2パターンに分かれます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

売り先行型
現在の住まいを売却してから、新しい住まいを購入する方法です。
こちらのメリットとしては、売却の成功や売却価格を確認したうえで購入できますので、資金計画が立てやすく後で問題が起きるリスクが低く、売却を焦る必要もありません。基本的にはこちらで行うほうが無難でしょう。
逆にデメリットとしては、購入者を待たせることになるので、新居を選ぶ際にはあまり時間をかけられません。場合によっては、一時的な「仮住まい」が必要になる可能性もあります。
購入者である買主に依頼して一定期間引き渡しを猶予してもらう「引き渡し猶予特約」もありますが、こちらで猶予される期間は長くても1週間程度です。
買い先行型
買い先行型は、新しい住まいを購入してから現在の住まいを売りに出す方法です。
納得いくまで時間をかけることができ仮住まいの心配も必要ありません。新居を重視する方には買い先行型が有効になることもあるでしょう。
反面、肝心の売却がうまくいくという保証はありません。そのため、想定より低い売却価格となり、購入費用が足りなくなるといったケースも起こりえます。
買い先行の場合、買い替え特約(停止条件付き契約)の利用をおすすめします。
これは現在の住まいが売れなかった場合に、売買契約を白紙解除できる特約で、万が一、買主が見つからなかったときでも、手付金を放棄することなく契約を解除できます。
買い先行で買い替える場合、売却金の決済前に新居の支払いが発生するため、新居の購入代金の支払いは現金もしくは住宅ローンを組んで支払います。
なお、完成前の新築マンションを購入した場合はつなぎ融資を利用することになります。
住宅ローンは、原則として完成後の住宅に融資が実行されるため、完成前の住居を購入する場合はつなぎ融資を利用して一時的に新居の購入代金を借り入れ、支払いに充てることができます。
まずは、つなぎ融資の取り扱いがあるか金融機関に確認しましょう。仲介会社から紹介してもらうとスムーズにいくこともあります。
つなぎ融資の借入金は売却金が支払われ住宅ローンが実行された時点で一括返済しますが、一般的に通常の住宅ローンと比べると金利が高い傾向にあるため注意しましょう。
手数料、印紙代が発生することも知っておいてください。
また、何らかの理由で住宅ローンの実行が遅れた場合、つなぎ融資延長のため追加金利が必要となったり、事務手数料が再度かかってしまったりすることもあります。
このため、住宅ローンだけを利用したときに比べて余裕をもった予算で資金計画を立てておく必要があります。
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住宅ローンが残っていてもマンションの買い替えは可能
現在の住居の住宅ローンを支払い中、つまり残債があるため買い替えは無理だと思っている方もいるかもしれませんが、完済前でも買い替え可能な方法をご紹介します。

ローンがまだ残っている段階でも、買い替えは可能です。最善なのは残額を一括で支払ってしまうことですが、それが難しい場合は「買い替え(住み替え)ローン」を利用するという方法があります。
これは、新居の購入費用と旧居のローン残額を1つにまとめて、新たにローンを組むというものです。これにより、いわゆる「ダブルローン」の状態になることを回避できます。
ただし額は違っても、月々の返済額が高くなることに変わりはなく、一般に申込時の審査も厳しくなる傾向が見られます。こうした点には注意が必要です。
マンションの買い替えで気をつけたいポイント

ここからは、マンションの売却時・購入時において押さえておくべきポイントや、上手に事を運ぶコツなどについて解説していきます。
マンション売却時のコツ
マンション売却に際しては、まず一般に相場といわれる金額を把握しておくことが大切です。それが分かっていないと、どれくらいの金額で売り出せばよいのか、どこまで価格を下げてよいのかも分かりません。まずは査定を依頼してみましょう。一括で依頼できる無料のサイトもあります。
また「内覧」も重要なポイントになります。先に売却する場合、所有者の生活感を感じさせるものが多いと、部屋よりもそちらのほうが印象に残ってしまい、買い手の購入意欲にも影響します。できるだけ購入希望者に部屋本来の姿が伝わるように工夫しましょう。
そのほか売却に関しては、買い替えではなく「リースバック」を利用する方法もあります。リースバックとは「自宅を売却しても、家賃を支払う形でそのまま自宅に住み続けられる」という便利なサービスです。
自宅は後で買い戻すことも可能ですので、一時的にお金が必要になったときなどには、非常に有効な方法といえます。
マンション購入時のコツ
マンション購入に際しては、まず間取りが適切であることの確認が重要です。部屋の数や面積は、多すぎても少なすぎても使い勝手が悪くなります。身の丈に合った部屋を選ぶことが大切です。
また中古物件であれば、管理状態が重要です。住戸内だけではなく、「ゴミ置き場」や「掲示板」「駐輪場」なども必ず確認するようにしましょう。もし回収されていないゴミや数ヶ月前の案内が残っていたり、自転車が乱雑に停めてあったりするようなら、日常の管理態勢がずさんだと想像できますし、マナーの悪い住人がいるということも分かります。
加えて、長期的な修繕が適切に行われているか確認しておくことも必要です。特に修繕費がきちんと積み立てられていなければ、後で高額な追加負担が発生する可能性もあります。
そして肝心なのは、やはりお金です。
いくら理想の物件でも、自分の支払能力を超えているなら、必ず後で問題が生じるはずです。よく忘れてしまいがちなのが、管理費や修繕積立金です。毎月これらの支払いがあることも考慮に入れておかなければ、後で支払いに苦慮することにもなりかねません。
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マンション相続時にかかる税金と手続きの流れ│利用できる特例制度
マンションを買い替えるときに掛かる税金や費用
マンションの買い替えに必要な税金や各種費用についても確認しておきましょう。マンション売却時・購入時でそれぞれ異なる税金・費用が必要です。

マンション売却時に掛かる税金や費用
マンションを含め不動産売却の場合、一般に売却額の5~7%程度の費用が必要になります。具体的には、主に以下のようなものがあります。
仲介手数料
売却を依頼した不動産会社に支払います。会社によっては無料で行う場合もあります。一般には「(売却額×3%)+6万円+消費税」で計算される額となります。
住宅ローンの返済に関する費用
買い替えに際して、ローンの残額を一括で支払う場合は、金融機関によっては手数料が必要です。一般的な目安としては5,000円~3万円程度になります。その際、抵当権の抹消手続きも必要です。これは自分で行うこともできますが、初めてだと分かりにくい部分も多いので、司法書士など専門家に依頼するのが一般的です。こちらはおおむね5,000円~2万円程度掛かります。
印紙税
売却する際の契約書には「印紙」を貼る必要がありますが、そのとき課される税金が印紙税です。税額は売却額に応じて決まり、5,000円~3万円程度になるのが一般的です。
譲渡所得税・住民税
土地や建物を売却して所得(譲渡所得)を得た際は、確定申告により、これらの税金も納めなければなりません。税額は、売却した物件を所有していた期間が「5年以下」か「5年超」かによって変わります。また、一定の条件を満たせば、特別控除や軽減税率、買い替えの特例などが適用されます。
マンション購入時に掛かる税金や費用
購入に際しては、一般に購入代金の5~8%程度の費用が掛かります。売却時と同じく仲介手数料と印紙税が必要になるほか、以下のような税金も発生します。
不動産取得税・固定資産税
不動産を購入すると課される税金です。不動産取得税は購入時のみ、固定資産税は毎年納付します。税額は国が定める「固定資産税評価額」によって計算されます。また物件の場所によっては、このほかに「都市計画税」が課される場合もあります。
登録免許税
不動産購入時に行う「登記」という手続きに課される税金です。こちらも固定資産税評価額によって計算されます。
住宅ローン契約に関する費用
新たに住宅ローンを契約して買い替える場合、さまざまな費用(諸費用)が発生します。
諸費用は、印紙税や融資事務手数料、登記費用、ローン保証料、斡旋手数料、火災保険料、団体信用生命保険料など。諸費用の合計額の目安として、新築の場合で購入価格の約3~5%、中古の場合で約6~8%が必要とされています。
マンションの買い替え時に利用できる優遇制度

自宅マンションを買い替えたとき、税金などの出費を少しでも減らすために使える特例制度があります。制度の詳細や条件などは最新の情報を確認し、適用できるものはしっかり利用しましょう。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
- 住宅ローン控除は買い替えにおいても適用を受けられる
- 住宅ローンの年末残高の1%(上限40万円)を所得税や住民税から控除できる
- 控除期間は10年ないし13年
- 2019年10月~2020年12月末までに入居すれば控除期間が13年になる
- 新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、入居期限の制限が緩和された
- 2019年10月~2020年12月末までに入居すれば控除期間が13年になる
- 控除期間は10年ないし13年
- 住宅ローンの年末残高の1%(上限40万円)を所得税や住民税から控除できる
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例などの併用はできない
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
- 売却で出た利益(譲渡所得)について、3,000万円までは課税対象から除外できる
- 居住用財産の定義「所有者が自己の生活の拠点として利用している家屋および敷地(借地を含む)をいい、一時的な目的で居住している家屋は認めない」
- 所有期間等の制限はなし
- 売却した住居に住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること
- 3年に1回だけ適用可
- 売却した住居に住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること
- 特定の居住用財産の買換え特例との重複適用はできない
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い税率で計算する軽減税率の特例
課税長期譲渡所得金額(A)が
・6,000万円以下はA×10%
・6,000万円超は(A-6,000万円)×15%+600万円- 特例を受けるためには居住地域や所有期間など、5つの要件すべてにあてはまることが必要
- 日本国内にあり居住していること。または住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売った年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていること
- 売った年の前年と前々年にこの特例を受けていないこと
- マイホームの買換えや交換の特例など他の特例を受けていないこと。ただし、3,000万円の特別控除の特例と軽減税率の特例は、重複適用できる
- 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
- 特例を受けるためには居住地域や所有期間など、5つの要件すべてにあてはまることが必要
特定の居住用財産の買換えの特例
- 所有期間が10年を超え、居住期間が通算10年以上の場合に適用される(継続していなくてもOK)。
- 売却するマイホームよりも高い金額の住宅に買い替えて住み替える場合、元のマイホームの譲渡益に係る譲渡所得課税を先送りする特例
- 課税は買い替え先の住宅を売るときまで先送りされる
- 2021年12月31日までの譲渡であること
- 譲渡対価が1億円までであること。
- 買い替え先資産にも適用条件があるため確認が必要
- 譲渡対価が1億円までであること。
- 2021年12月31日までの譲渡であること
- 課税は買い替え先の住宅を売るときまで先送りされる
- 売却するマイホームよりも高い金額の住宅に買い替えて住み替える場合、元のマイホームの譲渡益に係る譲渡所得課税を先送りする特例
- 3,000万円特別控除+10年超所有軽減税率の特例との選択制
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- マイホームの譲渡損失をその年の所得と合算する「損益通算」をして、それでも引ききれない赤字の金額を翌年以降3年間の所得から差し引くこと(繰越控除)ができる特例
- 買い替えにあたり住宅ローン控除の重複適用が可能
- 住民税の所得の計算でも繰越控除が適用可能。ただし合計所得金額が3,000万円を超える年分については、繰越控除の適用は不可。
- 損益通算できる譲渡損失は、以下のうちいずれか少ない金額
- 譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額
- 譲渡資産にかかる一定の住宅ローンの金額から譲渡資産の譲渡対価の額を控除した残額
- 損益通算できる譲渡損失は、以下のうちいずれか少ない金額
- 住民税の所得の計算でも繰越控除が適用可能。ただし合計所得金額が3,000万円を超える年分については、繰越控除の適用は不可。
- 譲渡資産・買い替え資産ともに適用条件があるため確認が必要
- 買い替えにあたり住宅ローン控除の重複適用が可能
「マンション買い替えの勝ち組となるために」
「マンションは、買い替えが必要になったときが買い替えるタイミングです。手順としては今ある住まいを先に売るほうが無難ですが、新居重視ならそちらを優先して先に購入してしまうのもよいでしょう。
相場や管理状況などをしっかり確認し、無理のない範囲で、身の丈に合った物件を購入すれば、損をして後悔するようなことにはならないはずです。マンションの買い替えを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。」

本当は買い替えたくない人にはリースバックがおすすめ
マンションを買い替えには様々な理由が考えられますが、ローンの返済資金や生活費を確保するために今の家を手放さなければいけないという方にはリースバックの検討をおすすめします。
不動産会社が提供するリースバックの商品には、サービスごとに特色があります。なかでも一建設の「リースバックプラス」は、ライフスタイルに適したサポートを受けられるのが魅力です。リースバックの目的や将来のビジョンに合わせて、2つのプランをご提案。短期的に買い戻しの予定が無いご家族や、ずっと同じ住環境をご希望のご家族に適した「標準プラン」、早期に買い戻すご予定の方や、とにかく賃料を抑えたい方、一時的な資金調達などに適した「定期プラン」から、ご家族のニーズに合うプランをお選びください。
さらにリースバックプラスでは、両タイプのプランに共通したサービスが充実しています。賃貸借契約では、敷金・礼金・仲介手数料・更新料が不要。「はじめごあいさつコール」や「24時間ホームセキュリティ」など、高齢者の暮らしに安心のサポートをご利用いただけます。ライフスタイルに合わせて選べる便利なリースバック商品をお探しなら、一建設までどうぞお気軽にお問い合わせください。
